静岡県立大学 食品栄養科学部 栄養化学研究室

LABORATORY OF NUTRITIONAL BIOCHEMISTRY,
SCHOOL OF FOOD AND NUTRITIONAL SCIENCES,
UNIVERSITY OF SHIZUOKA

卒業生の声、在校生の声

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特別インターンシップを経験して

「大学院で臨床経験+研究経験を詰むことの意義」

私は博士後期課程で、聖隷浜松病院における特別インターンシップに行かせて頂きました。ここには書き切れないほどの多くの気づきを得ましたが、その中でも「学部卒で就職をせずに、大学院で臨床経験+研究経験を詰むことの意義」について書きます。

聖隷浜松病院で私が経験させて頂いたこととしては、①厨房業務全般(治療食調理、盛り付けや配膳配送など)、②NSTカンファレンスでの患者プレゼンテーション、③栄養指導(個別及び集団)、④各種勉強会への参加、⑤他職種の業務内容の見学、でした。

①-④は就職して5年程度経験を積めばできることが多いとは感じましたが、栄養管理のレベルが高い施設で臨床経験が詰める点は大学院でのインターンシップだからこそだと感じます。

聖隷浜松病院は、様々な意味でレベルの高い病院でした。まず、病院全体に後進を育てようという文化があり、技術面・知識面・人格面で尊敬できる医療者が多いこと、次に電子ジャーナルが大学と同等以上読める環境があり(市中病院では稀です)、医師が日常的に研究をしているアカデミックな環境(こちらも市中病院では稀です)があることです。臨床研修医の研修施設としては県内トップの人気を誇っていることからも、レベルの高さが伺えると思います。「最初に就職する会社で学ぶ事は後々の基礎になる」とよく言われますが、インターンシップでは管理栄養士として仕事をしていく上での基礎を学ばせて頂けたと感じています。施設毎に栄養管理の実態(管理栄養士の人数や、病院内での立場など)が異なり、全員が全員栄養管理のレベルが高い施設に就職できるとは限らない中で、事前にインターンシップで栄養管理の経験を積むことは他の施設でも適切な栄養管理を行える人材になることができると考えます。

大学院で学べることも臨床現場で活躍するための基礎になります。集団栄養指導などでは「伝えたいメッセージを考えて、それを補助するデータを探して、分かりやすくまとめて発表する」というプロセスがとても重要です。加えて、病院では学術業績を求められることも多く、聖隷浜松病院でも学会発表や論文投稿を行っていました。大学院では研究活動を通じて、論文の探し方、論文を読みこなし方、論文の書き方や学会発表の経験といった医療者として身につけたいスキルを身につけることができます(本人の意欲が前提)。

医療現場では学術論文が治療における科学的根拠になります(ガイドラインは学術論文をまとめたもの)。それ故に、学会参加で知識を増やすことや、学会発表で得られた知見を他の医療者に伝えることはとても重要な活動です。研究職を希望しなくても、医療者として働いていくのであれば、研究や学会発表は必要不可欠です。さらに、論文発表を行っていくことで管理栄養士の活動に診療報酬が付き、管理栄養士の地位(≒収入)向上につながっていきます(例:2020年診療報酬改定におけるICU早期栄養介入管理加算400点)。

意欲のある管理栄養士は就職する前に修士課程で研究に関する最低限のトレーニングを受けるべきだと強く思います。私自身は、管理栄養士の地位が低い、給料が安いと文句を言いながら仕事をするのではなく、その現状を変えようとする、変えることのできる管理栄養士になりたいと思っていますし、これを読んでいる学部生にもなって欲しいです。将来活躍できる管理栄養士になる意欲のある方は是非大学院へ進学して欲しいと強く願います。そういった学生には教員も全力で指導するでしょうし、私もそういった後輩が付けば全力で指導します。

基礎研究と臨床研究どちらの知見も臨床現場では役に立ちます。臨床研究は、「何が健康に良いのか」という点で役に立ち、基礎研究は「なぜ健康に良いのか」という点で患者さんへ栄養指導する際の説得材料になります。加えて、臨床、基礎研究のいずれでも研究で身につけられる能力の本質は全く同じです。つまり、基礎と臨床のどちらを選んでも大差ありません。興味を持って自ら調べることのできる研究分野であれば、それは将来本人の強みになると思います。「臨床に近い研究かどうか」ではなく「自分が興味を抱いて調べたり考えたりすることのできるか」を大事にしてください。

就職してお金を稼ぐようになるのが2年間遅くなる点を気にする方も多いと思います。しかし修士の2年間は、一生の中でみれば短い2年間です。働き出してから大学院に通う場合、時間の面でかなり無理があります(業務との兼ね合いもそうですし、育児家事などの都合もあります、さらに近場に大学院があるとも限りません)。修士の2年間はモラトリアムとしての2年間ではなく、自己投資のための2年間だと捉え、学費と時間に見合った研究姿勢で取り組むことで、将来リーダーとして活躍できる管理栄養士になれる確率が高まると思います。

管理栄養士として働くなら、是非修士過程で臨床+研究経験を積んでください!

2020年4月

(注:栄養化学研究室では過去にも2名の大学院生が特別インターンシップを経験しています。基礎研究を経験した後に臨床現場を経験することは、臨床現場におけるリサーチマインドの重要性を認識する良い機会となります。また、何が臨床現場で求められていて、自分の研究がどのような意味を持つのかを深く考えるきっかけにもなります。)

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